古書組合の今年の秋レクは人形浄瑠璃鑑賞だった。
最初に文楽劇場の一室に集まり、古本コレクターの豊竹呂勢太夫さんの楽しい講義。
この方は多くの古書店のお得意様である。そして人形使いの方の詳しい説明を受けた。
この説明会だけで内容がぎゅうぎゅうに詰まっていて、胸がいっぱいになった。
以前、20年前ころに前川と一緒に鑑賞したことがあった。
確か母子物だったと思うが、二人して不覚にも涙が止まらなかった。非常に感激したことを覚えている。
そしていよいよ開演。
演目は
花上野誉碑(はなのうえののまれのいしぶみ)
恋娘昔八丈(こいむすめむかしはちじょう)
日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)
此の題目をみて花王石鹸はさくら石鹸だったのかと隣の方と感心していた。
休憩も入れて3時間半、正直言って人形浄瑠璃をみるのは体力勝負だと思った。若い内だ。
次の思ったのは人形浄瑠璃は進化していると言える。
もちろん豊竹一門の義太夫節や寺沢一門の三味線は変わらないが、舞台芸術としてどんどん進化していると思う。
まず上方に字幕がでる。耳で聞きながらわかりにくいところは字幕で確認できる。
義太夫節の言葉の美しさ、語りの面白さが次々と理解できる。
日本語がいかに美しく詩的であるかを実感できる。
次に背景の照明、背景の舞台道具の色彩、動きがどんどん立体化されている。
総合舞台芸術の趣が出てきている。
フランスの不思議な現代劇フィリップ・ジョンティー・カンパニーが人形浄瑠璃の手法を取り入れたと言われていたが私にはわからなかった。
しかし今日見た「日高川入相花王」の清姫が日高川を渡るシーンの浪の出し方はフィリップ・ジョンティーのシーンに確かにあった。
これはあの時気づかなかった新たな発見だった。
いろいろなことを教えてもらえた充実した鑑賞会だった。
後の懇親会で飲みすぎてアホなことを言って自分が嫌になったことも一つの思い出だ。